捨てないパン屋特集

職人気質の日本人が物作りにおいて意識した方が良いポイント

捨てないパン屋さん記事特集。今回は田村さんがパン作りで意識していることについて聞いてみました。

 

 

田村 陽至(たむら ようじ) 
広島市南区生まれ。北海道や沖縄で山ガイド・環境教育の修行後、モンゴルに2年間滞在し、エコツアーを企画。2004年からパン屋「ドリアン」を経営。2012年に1年間休業してフランスで修行。

 

日本人が物作りにおいて意識した方が良いこと

−−ヨーロッパでパン作りを学んでみて、日本に帰ってから意識したことやポイントはありますか?

意識したのはやりすぎないこと。

たぶん日本人の気質としてもっと良くしたいって想いがあるんですよ。

例えば、今のパン作りでもここに生地があってそれを切ってすぐ丸めて、かごに入れてってやってるんですけど、切ってちょっと丸めて置いといて、それをまた30分後に丸めて入れてっていうのが本当はベターでセオリーなんです。

そうするとたしかにちょっと良くなるし、美味しくなります。

 

でもそれをやったからといって、気付くお客さんは10人中1人か2人くらい。

1人か2人気付くくらいの小さな差ならやらない方を取るっていう考えに至ったのは帰国後です。

以前だったらもっと追求して、こだわればこだわるほど良くなるって思っていたんですけど、お客さんが9人気付かないってことは、それはお客さんのためっていうよりかは自己満足。

 

お客さんは、安心できる良い材料で焼いてくれて、値段もそんなに高くないものを求めています。

でも、職人はもっと良いものをもっとこだわって、その代わり粉の値段は7割くらいの物を使わせてもらいますよってスタンスです。

お客さんのためって言いながら、本当は自分の快感だけを求めています。

みんなこだわってやるけど、それが不幸に繋がると思います。

職人は疲れ果てて行くし、それをやらなきゃいけないんじゃないかって雰囲気も出てくるし、これだけこだわってるんで買ってくださいって言ってるようなものです。

 

「こんなに苦労してるんで、美味しくないかもしれないけど、それは天然酵母だからしょうがないんです」って訳のわからない理屈で日本のパン屋さんは売っています。

ヨーロッパはその考えの真逆なんですよ。

自己満足はゼロ。

それはすごい変わった点ですね。

おしゃれじゃなくても良いから、安くて美味しいものを食べさせてもらえればそれで良いんですよ。

誰かがうちのカンパーニュを1,000円で販売してるって投稿をUPしたら、それに対するコメントで、「うちの近くのパン屋のカンパーニュは400円で売ってるよ」ってやりとりがあったんです。

 

そこにそのパンはどれくらいの大きさなのか、どれくらいの重さなのか、材料はどうなのかみたいなことは書かれていません。

 

ヨーロッパは結構厳密だから、重さあたりの値段が書いています。

こっちのパンはkgあたりどっちが安いんだ、みたいに比べられるようになってて、今のお客さんは賢いから計算するんです。

 

そしたらうちのパンは近所のスーパーで売ってるパンとkgあたりの値段が同じなんですよ。

賢いお客さんは絶対離れないし、パンは売れ残らないですよね。

 

作り方にこだわって物を作るより、材料に良い物を使えばそれだけで美味しくなるということに気付かされた田村さんは帰国後、手抜きをして休みを増やすことに成功しました。

視点を変えて物事を見つめることで、新たな働き方と出会えることができると思います。もし今の働き方に悩んでいるなら視点を変えてみてはいかがでしょうか?

ABOUT ME
RORO
フリーランスのライター。大学卒業後、ピースボートで世界一周の旅に出る。「ソトコトオンライン」で連載記事執筆、「TABIPPO.NET」でイベントレポート執筆・編集を行ったのち、現在はSAGOJOライターとして活動。半農半Xを目指し農ある暮らしを取り入れ中。これまでの経験をもとに「自分らしく生きる」をテーマとしたコンテンツをお届けします。