捨てないパン屋特集

パン業界に革命をもたらす捨てないパン屋さんの働き方

広島市にある「ブーランジェリー・ドリアン」は、捨てないパン屋さんとして活動をしています。

余ったパンや賞味期限が切れたパンは捨てるのが当たり前。そんな日本の常識を壊していくスタイルに私は心を動かされました。

捨てないパン屋さん

私が捨てないパン屋さんを知ったのはFaceBookでシェアされた投稿を見たときが始まりでした。

「捨てないパン屋」

僕が唯一、
ドリアンで誇りに思っていることは、
パンを捨てないところ。

例えば、
昨年秋から年が明けた今日まで、
毎日たくさんパン焼きましたけど、
1つも捨ててません。。

「捨てないパン屋」
になろうと思ったのは、
まだ菓子パンもやっていた10年前。

その頃、
モンゴル人の友人がうちにホームステイしていて、
その子が、
「パン捨てるのはおかしい」
「安売りすれば?誰かにあげれば、?」と言いました。

「できないよ。そりゃ俺だって一生懸命作ったもの捨てたくないよ。」と僕。

「でも、やっぱり食べ物捨てるのおかしいよ。」

「できないよ。配って歩く時間もないし。」

と言い合いになって。
最後は、、

「日本じゃ、しょうがないんだよ!」
と声を荒げてしまった。

すごく、自己嫌悪だった。
泣きたかった。
正しいのはその子の方なんだ。
日本がおかしいんだ。

食中毒にうるさい現代、
残った菓子パンを、次の日売るとか、だれかにあげることはできない。

だったら、菓子パンはやめるしかない。
あんパン食べたかったら、
自分で餡子をはさんでもらえばいい。
そう、自分に言い聞かせてやめた。

僕は何億円パンを売ろうとも、
ドカドカパンを捨てるのであれば、
何の価値もないと思う。

今まではしょうがなかったかもしれないけど、
今からはほんとうに許されない。
時代がかわったのだから。

中川さんの粉カムホを使った時。
「売れ残ったら、全部送ってください。買いますから。」
と言われた。
農家さんがどれだけ思いを込めて、
我が子のように麦を育てているのか、
わかってたつもりだったけど、
わかってなかったかもしれない。

海外の粉をドカドカ使っていたら、
こんなこと一生わからなかった。

雨の日メイツや、
堀越→八丁堀→トルヴェールのリレー販売、
グリーンブリッジさん、
のおかげでなんとか売り切っています。。
それでも残ったらラスクです。

ネット店もありがたいです。
予約だから当然捨てません。
が、ネットはけっこう上がり下がりがあります。
そこで、定期購入がはじまりました。

定期のお客様、今は100人です。
もしこれが1000人であれば、
例えば、
店売りやめても、豊かに暮らしていけます。
パンを1つも捨てることなくです。

ということは、
一億人に嫌われても、
1000人のお客様の為に全力でいいもの焼けば、
暮らしていける時代が、
もう来ています。
買う方も売る方もそれでいいと思います。

マスコミの時代も終わり、
みんなが一緒の時代ではなくなったのですから。

捨てないパン屋を目指すには、
ありがたい時代です。

出典:「ブーランジェリー・ドリアン」FaceBook

物や食が豊かな現代において、レストランで食事を食べてもお腹いっぱいになったら残すのが当たり前、賞味期限が切れたら捨てるのは当たり前になりつつあります。

そんな現状を打ち壊してくれるようなパン屋さんが日本にもあるんだということを知って、とても温かい気持ちになりました。

時代が進んでいく中、お金の豊かさだけを求めるのではなく、物質的な豊かさや心の豊かさを求めていく人が増えていけば今よりもっと生きやすい時代になると思います。

店は賑わっても経営難に苦しむ

ブーランジェリー・ドリアンの店主・田村陽至さんは、以前まで、夜遅くから夕方まで働く毎日を過ごしていたそうです。

仕事が終わったら食事をして数時間眠る日々。

お客さんの喜ぶ顔を見るために多くの種類を焼き、
焼き立てのパンをお店に並べ、売れ残ったパンは廃棄に回す。

お店は多くのお客さんで賑わっていたにも関わらず、多くのスタッフを雇い、お店を維持するためのコストが嵩み、経営難に苦しんでいました。

パンを捨て続けることに疑問を感じながら、頑張っても利益が出ず、このままでいいのか悩んだ田村さんはお店を1年間休業してヨーロッパへと旅に出ました。

ヨーロッパの働き方に衝撃を受ける

ヨーロッパのパン屋さんで修行をした田村さんは、ヨーロッパの働き方に衝撃を受けます。

日本では長時間働いて、作り方や焼き方にこだわり、材料にはあまりお金をかけずにパンを作っていくのが一般的。

しかし、ヨーロッパでは時短勤務で働き、作り方にこだわるのではなく材料にこだわってパンを作る。こだわりは日本の方が強いのに、ヨーロッパで食べたパンは格別に美味しかったそうです。

勤勉で真面目な職人気質の日本人は、
長い時間をかけて一つの物を作り上げることを美徳と捉えますが、それは単なる自己満足でしかないということに田村さんは気付かされます。

手を抜いて材料にこだわって作れば美味しいものができる。

そんなヨーロッパの働き方に魅力を感じた田村さんは日本でもヨーロッパの働き方を取り入れていきます。

人員を削減し、休みを増やしても売り上げは以前と変わらない

ヨーロッパから帰国した田村さんは、今までとは異なるパン屋さんを目指します。

パンの種類を減らして、菓子パンを減らす。こうすることによって、パンの賞味期限が長くなるので、パンを廃棄する量が減ります。

実際に田村さんが作るパンの賞味期限は2週間くらい。

焼き立てのパンより、寝かした方が美味しくなるという今までのパンの常識を覆していきました。

スタッフの数を減らし、お店の営業日を週3日に減らして、夏には1ヶ月のバカンスを取るスタイルに変えていきました。

お店の他にネットで定期購入を始めたので、お店の売り上げに左右されずに、一定の収入を確保することで経営に苦しむこともなくなりました。

スタッフの数を減らして、休みを増やしたにも関わらず、年商は以前と変わらない状態をキープできているそうです。

この働き方を知った私は最初驚きました。田村さんは1ヶ月のバカンスの間、海外を旅しながら、他の国の働き方やパン作りについて勉強をしています。

時短勤務にして手抜きをすることで、身体への負担も減るし、休みを増やすことで家族や大切な人と過ごす時間を増やすことができる。

そして、1ヶ月のバカンスを取って旅をすることで、色々な価値観や考え方、働き方を学ぶことができる。メリットしかない仕事の働き方にとても共感しました。

働き方に悩む若者が多い中、田村さんのようにヨーロッパの働き方を真似することで、もっと豊かな生活を送る人が増えていくことを願っています。

ABOUT ME
RORO
フリーランスのライター。大学卒業後、ピースボートで世界一周の旅に出る。「ソトコトオンライン」で連載記事執筆、「TABIPPO.NET」でイベントレポート執筆・編集を行ったのち、現在はSAGOJOライターとして活動。半農半Xを目指し農ある暮らしを取り入れ中。これまでの経験をもとに「自分らしく生きる」をテーマとしたコンテンツをお届けします。