広島市にある捨てないパン屋さんこと「ブーランジェリー・ドリアン」の店主・田村陽至さんがFaceBookで投稿していた記事に感銘を受けた私は、広島にいる田村さんの元へと取材に訪れました。
今回は捨てないパン屋さんの原点にもなった、スペイン巡礼旅についてのインタビューをお届けします。
捨てないパン屋さんとは?
パン業界に革命をもたらす捨てないパン屋さんの働き方
捨てないパン屋は旅するパン屋
田村 陽至(たむら ようじ)
広島市南区生まれ。北海道や沖縄で山ガイド・環境教育の修行後、モンゴルに2年間滞在し、エコツアーを企画。2004年からパン屋「ドリアン」を経営。2012年に1年間休業してフランスで修行。
終わりを迎えるのが寂しかったスペイン巡礼旅
−−スペインの巡礼はどれくらいの期間行ったんですか?
大体片道40日くらいなんですよ。
最初は代表的な道に行って、その翌々年に北の道って言う海岸沿いの道を行きました。両方とも本当に良かったですね!
一応、歩いてご飯を食べて、お酒を飲んで寝て歩いてっていう旅の目標があって、お腹は空くし、パンは美味しいし、運動もしてるし、お酒を飲んでも罪悪感がない。
でも、毎日違う人に会って、違う道を歩いていたので、刺激はいっぱいありました。
パンのことを調査するっていうミッションもあるので、
歩いている途中にパン屋があったら寄ってたりしていたので、本当に終わるのが寂しかったです。終わった日とかその次の日とか憂鬱ですよね。
パン作りが楽になった
−−旅先でパン作りに取り入れてみたいと思ったことを教えてください。
スペインの巡礼って、小麦畑の中を歩いているようなものなんですよ。
しかも1種類だけじゃなくて、歩いていたら4~5種類くらい採取できます。
それをカバンに入れて持ち歩いていて、宿でスパイン人の知り合いと一緒になった時に、「スペインではどれがパンに適した小麦なんですか?」って聞いたら爆笑されて。
そんなに変な質問なのかなと思ったんですけど、向こうの人の感覚としては違うんですよ。
「パンはそこの土地でその時に取れる麦を捏ねて焼いたものでしょう」って言われました。だから、どれがいいとかどれが適しているとかそういうのがないよって。
そう思うと標高の高いところは、小麦が取れないからパンが美味しくないんですよ。
標高が下がっていって小麦が生えてくると、ライ麦が混ざったパンとかが出てきます。それで、だんだん小麦だけになって、自然にパン所となる地域になっていくと、すごいパンが美味しいです。
その人に爆笑されたことで、本当にパン作りが楽になりました。
日本のパン屋さんって、こういうパンを作りたいって設計をするんですよ。
でも、そういうのって1番爆笑されるわけです。
選ぶことなく自分の身の回りで1番良い物を使って作れば、日本はそんなに小麦がないから、責任は自分にないというか。
「混ぜて焼いたらこうなったんだし、別に俺のせいじゃないよ」みたいに言えるでしょう。となると、すごい肩の力が抜けるんですよ。いい感じの抜け感が出て良いパン作りができます。
捨てないパン屋さんの原体験にもなったスペイン巡礼旅についてお届けしました。
日本の常識ではない新しい価値観を受け入れることで、パン作りが楽になった田村さん。パン作りに関わらず、世界から学ぶことはたくさんあると思います。